アルコール依存性に陥る人というのは、決してだらしない人や弱い人、嘘つきな人ではありません。
アルコール依存性の症状だけをみると何だか仕事もせずに飲む人や、飲まないと言いながら結局飲む人、酔っ払って気を大きくしている人がいます。
元々の人格が原因ではなく依存性という病気が患者の意思を壊し、誰しも持つ「弱さ。誤魔化す心。だらしないところ」これらが高まるのです。
ただ、お酒が飲める人と飲めない人というのは関係があるようです。お酒が飲めない人はそれだけでアルコール依存性になりにくい、可能性はとても低いという事になります。そこには遺伝性が関わっています。
その遺伝も今の時点ではっきりとは分かっていないようですが、飲める人と飲めない人の違いが、持って生まれた「アルコールを分解する酵素の量が多いか少ないか」ということなので、「遺伝がアルコール依存性に影響を与える」程度にしか分かっていません。
そして、身体は継続して摂取するアルコールに耐性を作るので本来お酒を飲めなかった人は、アレルギー体質で全く酒を受け付けない限り、絶対にアルコール依存性になりにくいとも言い切れません。誰にでも起こり得る問題なのです。
例えば、とても真面目で意思の強い人がアルコール依存性にかかってしまったとします。なんとか治療して症状が一旦完治した様に見えたところで、また少量お酒を飲んだのをきっかけに症状が戻ってしまう。
そういうケースが多く、そこが依存性の怖いところです。実際には元々の人格や遺伝、酒に対する意識はあまり関係がないと言えるでしょう。
環境要因や遺伝要因、小さな心境の変化、人間関係、もしくは、ただ単にお酒が美味しくて…と、きっかけや原因は様々です。
ですが、依存性という恐ろしい病気には誰が悪いか何がいけなかったかではなく、回復に努めるのが一番であり、どう悪影響だったものに対処するかを考えるのは心身共に余裕ができてからでも遅くはありません。
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アルコールに対しての欲求
通常飲酒での欲求は「仕事が終わったら部屋でゆっくりビールを飲んで寝よう」とか、「週末の飲み会でいっぱい美味しいお酒を飲もう」といったところでしょうか。
もっと好きな方は「明日は休みだ。昼から飲んじゃおう」とか。ところがアルコール依存性となると、その欲求の持ち方も違います。
時間や場所、頻度や量を自分でコントロールできなくなります。
今日は一杯だけ…と決めても、仕事に支障が出るほど長い時間で大量のアルコールを摂取したり、この一杯を飲んだら自分は必ず記憶をなくすまで飲み続け、気が付くと外で寝ているような有様になる。そう分かっていながら飲んでしまうのです。
そして、禁酒を誓って家に酒を置いていないのは当たり前なのに、酒を買いに行く。そういった、理屈が通らない欲求を持ってしまい、その欲求に従って行動します。
精神的、身体的依存が作り出されてしまえば何とかしてアルコールを入手して、飲み続けようと全力で欲する訳です。
依存が形成され、継続してアルコールを摂取していくと次は身体の中でアルコールの耐性ができ、次第に摂取量が増えていきます。
通常飲酒の状態でいう「飲み過ぎ」というものを、依存を患っていると「飲み過ぎ」だけでは納まらないのです。
アルコール依存性患者がよく配偶者や家族に暴力を振るっているのは、酔っ払ってるときだけでなく、飲む量を注意された。酒を充分な量を用意していなかった…という時にも多く見られます。
もちろんそのアルコール依存性患者は、他の嗜好品に関して摂取量を咎められた、切らしていた時は過剰な暴力や暴言などは出てこず、依存しているアルコールに対してだけ全力で欲するのです。
ここで周りの人は感情的になってはいけません。その場から離れる事が大切です。もちろん、酒を飲ませておけば丸く収まるという考えは以ての外です。
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アルコールの乱用、依存、中毒
アルコール依存や中毒は聞いた事があるかとは思いますが、アルコールの乱用とはあまり聞きません。
薬物乱用なら聞きますが、この乱用と依存と中毒をよくみると同じような意味を持って使われているようですが、精神医学でみると違った意味と状態をさしています。
まず、アルコールの乱用とはどんなものかというと、社会的にも身体的にも許容範囲を超えたアルコールの摂取になります。
この場合は未成年者の飲酒、アルコール摂取によりトラブルを起こすのを分かっていながらの飲酒、ドクターストップがかかっている中での飲酒です。
例えばこれが違法薬物であれば一度の使用でも薬物乱用となります。そして、アルコール依存というと乱用を繰り返すうちにアルコールを摂取し続けなくてはならない状態。
アルコールを求めて凄まじい欲求をみせたり、アルコール摂取のために多大な労力を使います。乱用は行為、依存は症状や状態を指しています。
そして、よく聞くのがアルコール中毒。アルコール中毒にも急性アルコール中毒と慢性アルコール中毒があります。
急性アルコール中毒とは、一気飲みなどで短時間に大量のアルコールが体内に入った時や、お酒がほとんど飲めない人が無理をして多く摂取した時に起こる症状です。
急な酔いの回り方をして吐き気や嘔吐といったもので済めばまだ良いのですが、心拍数や体温の急な低下、意識障害で命に関わる事があります。
慢性アルコール中毒とは、すでに依存性を発症している事が多く、乱用を繰り返した結果として出るアルコールによる身体的、精神的なダメージです。肝機能障害が多いのですが、それにとどまらず他の様々な臓器や脳、精神にも支障をきたします。
アルコール依存性を防ぐとすれば、先ずは自身がする飲酒が乱用ではないかと見極める事から始めると良いでしょう。
サラリーマンも要注意のアルコール依存症
意外と多いのがサラリーマン(女性でも、企業に勤めて社会的に地位や立場のある人)のアルコール依存症患者。
偏見なのか、アルコール依存症というと少し浮世離れではありませんが、地に足が付いていない人の抱える病気に思えます。
すくなくともスーツにネクタイといった出で立ちではなく部屋着とか、ヨレヨレの普段着など仕事とは結び付かないぐらいラフさを醸し出しているイメージです。
アルコール依存症は四六時中お酒を飲んで酔っ払うのですから、しっかりと会社勤めをしている人が患う病ではなさそうな、最低限しっかりと会社勤めはしていないような人が患うもののような気がします。
それは、アルコール依存症という病気が、患者はアルコールがなくてはいられない。常に飲んでいると思っている人が多いからでしょうか。
確かにアルコール依存症が進行すれば常にアルコールが入っていなければ居ても立っても居られない状態にはなります。
それが、初期症状は『常に』ではなく『お酒を飲むのを心待ちにしている』ということから入ります。
そして、酔が回った状態に開放感を覚えたり、もしくは心のたがが外れる事を自覚して飲む事だってあります。
飲んで開放感を得るのは誰だって持っている感覚ですが、アルコール依存症となると、その開放感を拠り所としているケースが多いのです。
お酒を飲む人は誰しも仕事が終わり、一杯飲むのを楽しみにしていることと思います。その、楽しみにするアルコールへの期待の度合いが違うのです。
したがって、サラリーマンのように決まった時間に出勤して、会社に居る時間も長く、次の日も仕事だという人だってアルコール依存症になるのです。
サラリーマンでアルコール依存症が多いのは、飲む時間が決まっているからだという見方もあります。飲むことで仕事の終わりを実感しながら疲れを取る…。
それが、飲むことを楽しみに仕事をする方へ変わり、そのお酒が日々量も増えていき、酔いつぶれていつの間にか寝てしまい、朝を迎えるのが日常化していくケース。
次第に仕事にも支障をきたすようになり、そうなった頃には禁酒日も設けられないほどになっているのです。
サラリーマンのアルコール依存症のきっかけは、日々の仕事のストレスからの飲酒が多いそうで、その飲酒も、自分はしっかりと働いているのだから飲んでも良いだろうという意識も強く持っているので、なかなか初期症状に気付くことは難しいところです。
一日仕事を片付けたご褒美に…というよりも、飲まずに身体を労わる身体へのご褒美も設けることがアルコール依存症対策です。
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