アルコール依存症の特徴として、とても心の病気を発症しやすいということです。
それは元々アルコール依存症に陥るまでには心に問題を抱えてお酒に走ったのか、それとも過剰なアルコール摂取によって引き起こしたのか…。
その辺りは人それぞれだとは思いますが、どうあれ抱えていた鬱や躁はアルコールの摂取では払拭できないことは確かです。
うつ病は治る病気!接し方を学んで克服しよう
もしもストレスがお酒で払拭できていたなら、一晩の飲酒である程度はスッキリできたのです。
鬱病とアルコールの相性は悪い意味で非常に良く、元々鬱状態になりやすい人はアルコールを摂取している時は悩みなどまるで全く抱えていないような気持ちになります。
そして、どういう訳か鬱状態にあった人は酔い潰れるまで飲んでしまうのです。鬱だけでなく躁、不安障害を抱えた人も。
そんな人が翌朝目が覚めると、飲んでいた時の開放感は何処へやら、また暗く重い気持ちが心の中を大きく陣取ります。
このようなケースは、アルコールを摂取することによって気持ちが楽になると言っては日々、摂取量が増えていき、次第に量だけでなく飲む時間も長くなって、気が付けばアルコール依存症を患っているということも。
この場合、心の調子が悪い時に飲酒をしてからストレスが発散できたかどうかを知る事でアルコール依存症を防げるのです。
酔いが覚めたら、また大きな落ち込みがあるようならアルコール摂取は何の役にも立っていないということです。
これは、鬱病が先行してアルコール依存症を引き起こすもので、一次性鬱病といいます。
そして、アルコール依存症が先行して鬱病を発症するものは二次性鬱病といいます。
この場合、鬱病を発症する原因は幾つかあって、離脱症状の鬱症状からくるものや、飲酒時に孤独や絶望感など精神的な痛みが増強して鬱状態になるもの、萎縮で脳がうまく働かず精神のバランスを崩して鬱状態になるもの、お酒を飲まなければ眠れない状態で、質の良い睡眠を摂れずに鬱状態になることも。
この、アルコール依存症がもとで鬱を併発する二次性鬱病は発症する原因が多過ぎて、どうもアルコール依存症を患えば誰でも鬱状態に陥り易いような気がします。
アルコール依存症になり、なんとか飲まずに過ごす事に取り組もうとする反面、裏腹な気持ちと言い訳を用意してアルコールを摂取しようと必死なのです。
そんな精神状態にあるならストレスがかかって当たり前だし、簡単に治らない病気なのですから闘病する間に鬱状態をみせる人は多いでしょう。
アルコール依存症と鬱病を抱えた人で自殺が多いのは、いかにアルコール依存症が絡む精神疾患は危険かということです。
アルコール依存症に合併する精神疾患として、臨床現場において遭遇する機会の多い疾患は、うつ病、双極性障害、不安障害です。これらの精神疾患を見逃し、適切な治療を行わないと、合併している精神疾患だけでなくアルコール依存症の症状も改善しない可能性があります。一方、アルコール依存症の治療経過中にみられる不安・抑うつ症状は、精神疾患に伴うものではなく離脱症状の場合があります。
引用元:新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き
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アルコール依存症から認知症へ
認知症とは、原因は様々ですが脳の細胞が死んで働きが低下することです。
細胞の破壊は脳全体でなくても、それがほんの一部でも脳は体の動きをコントロールする場所なので生活に支障をきたすことになります。
脳の細胞の死で知能、記憶などが低下する症状で、一見すると何の意識障害もないまま病的に何度も同じ事を繰り返して聞いたり、物忘れの酷さ、感情表現の変化が目立つので、明らかに周囲の人は「おかしい」と感じます。
このような、脳の細胞の死によって日常生活を送ることが困難となって6ヶ月以上経って認知症といいます。
認知症というと、お年寄りのかかる症状かと思ってしまいますが、アルコールが引き起こした認知症は若い人でも起こりうるものです。
「原因は様々」といううちの一つにアルコール依存症も入っています。
これはアルコール依存症の合併といい、長期に渡るアルコールの大量摂取が原因で脳の萎縮を起こしたことが原因です。
四六時中、飲んで酔い潰れて数年間過ごすと認知症を引き起こす…というものでもなく、あくまで脳の萎縮が原因で認知症になるまでというものです。
アルコール依存症と認知症の合併は、重症化した時に引き起こすことが多いようです。
毎日飲んで問題を起こしては酔い潰れて眠り、目が覚めて飲酒を後悔して仕事へ行き、帰宅するとまた飲んでしまう…といった、初期症状で突然認知症になって生活が困難になるということはなく、長い期間アルコール依存症を患い離脱症状も重く、幻覚や幻聴、嫉妬妄想、被害妄想といった精神疾患も表われた頃、すでに脳は萎縮していてアルコール性認知症を発症します。
必ず脳の萎縮が進むとアルコール性認知症になるわけではありませんが、高い確率で発症することから関係は深いと考えていいでしょう。
アルコール性認知症は脳の萎縮の他に、脳血管障害、肝硬変、糖尿病、栄養障害などといった、アルコール依存症による症状が原因と診断されて初めて『アルコール性認知症』となります。
脳の萎縮、認知症は完治しない症状ですが、アルコール依存症自体は認知症を合併するまでに長い時間と大量のアルコール分を要しますので、アルコール依存症の治療は早期に越したことはないのです。
認知症は自分で自分をコントロールできない本人も周りの人も辛い病気です。しかし、アルコール性認知症はアルコール依存症の治療で予防できるのです。
『飲むだけ飲んで、最後には訳が分からなくなってしまった』という事態に発展する前に、先ずはアルコール依存症の治療です。
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